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2006年11月19日 (日)

サンカのこと

20061119sanka

『サンカの民と被差別の世界』  五木寛之著 (講談社刊)  838円(税別)

またまた子供の頃の話です。 東京オリンピックから大阪万博のあたりの時代を想定してください。 当時大人の言葉から覚えた単語の中に、「ほいと」というのと「ことり」というのがありました。 新幹線がようやく東京~新大阪間に開通し、名神高速道路が出来て、日本が戦後復興をめざましく遂げていた頃に聞いた言葉です。

「ほいと」というのは「乞食」のことだと教えられました。 しかし記憶の片隅にあるホイトは何かを売り歩いていたような気がします。 また「ことり」というのは美しい声でさえずるbirdではなく、「子捕り」つまり人さらいのことです。 「夜、口笛を吹くと子取りがくるぞ」と言われたものです。

山に入って釣りをするようになってから、パソコン通信で杉浦清石さんという大正生まれの釣り名人と面識を持ち、何度か同行するようになりました。 釣りに関する書物も執筆されていますので、名前をご存知の方もいらっしゃると思います。 その清石さんから「サンカ」についていろいろな話をお聞きしました。 山に住んで、自然の恵みで暮らしを立てている人々で、かつては戸籍への登録もなく縄文人のように生活していたような話を興味深く聞きました。

サンカについてはずっと脳裏に引っかかっていましたので、この本を見つけたときは迷わず手にとっていました。 そして読み終えて考えたことは、自分はどこから来てどこへ行くのだろう・・・ということでした。 アレックス・ヘイリーの小説『ルーツ』が1977年にTVドラマとして世界的大ヒットになったことをご記憶の方もいらっしゃるでしょう。 それに近い感覚です。

無論私の両親(すでに父母ともに他界しましたが)の生家が何をやっていたかは聞いています。 しかし今の自分を形成したのは、血縁のある者だけではありません。 生きてきた環境のなかでふれ合ってきたすべての人々や物事が自分のルーツだと思うのです。

「ほいと」って何だったのだろう? 「ことり」って本当にあったのかな? それを知ることは子供の頃に触れたもの(言葉)の意味を知ることでもありました。 結果、この本を読んで「ほいと」についてはやっぱり「サンカ」だったのかもしれないという推測が強く台頭してきました。 なんだか宿題を半分やり遂げたような気持ちです。

人生いろいろあるんだからそんなことどうでもいいだろうと考える人もいるでしょう。 でも自分のルーツってなんだったのか、やっぱりそれを探してみたいですね。 今、生きるにはどうでもいいことでも、ほんとうはとても大切なものだったりする気がします。

2006年11月19日(日) @東京世田谷

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