ねこやしきのこと
猫は泳ぐか・・・試してみたことがある。 結果は、泳いだが泳がなかった。
まだ私が中学生の頃、生前の母が動物好きで捨て猫を見ると拾ってきた。 そのうち猫が10匹以上にふくれあがり、猫屋敷になった。 もっとも時を同じくして犬も3匹飼っていたので、賑やかなことこの上ない。
犬に比べて猫はきれい好きで、神経質で、それでいてのんびりしている。 つまるところ生きるのは大変だが、生きられないわけではないので、それならば人間にへつらうこともなく、自由に気ままに生きようというような性格が猫の猫たる所以である。
そうそう、猫が泳ぐかどうかの答えをしなければならない。 風呂に引きずり込んだのである。 湯船の中で見事に猫カキをして縁にたどり着いた。 ところが当時はもう五右衛門風呂ではなくタイル貼りの風呂だったが、タイルの目地に爪がかかりそうでかからない。 そうしているうちに後ろ足で水を蹴って何とか飛び出した。 泳げるじゃないか・・・そう言った私の顔を恨めしそうに見た後、フンと鼻であしらうようにして外に出て行った。
ここまで書くと動物愛護団体からなぶり殺しにされそうだが、弁解までに、私は猫をかわいがっていたと言っておこう。
猫は基本的に夜行性である。 だから暗くなると家を出て、夜中に帰ってくる。 その帰り道が私の部屋だった。 すべての猫は好きなところから出て行くが、夜中には私の部屋の窓だけが開いているのを知っていて、そこから戻ってくるのだ。 それはまるで漁に出た漁船が一隻また一隻と港に戻ってくるようであった。
しかしだ・・・夏はいい、秋もまだいい、でも冬は大変だった。 かといって猫を締め出すわけにはいかない。 私は木枯らし吹きすさぶ夜も窓を開けて毎夜猫を迎え入れる役を果たしたのだった。
ただ捨てる神あれば拾う神あり。 短所の裏に長所。 災い転じて福となす。 猫が私の布団にもぐったり、布団の上で丸くなったりして、それはそれで暖かかった。 時に小便を漏らす癖の悪い猫もいたが、それは徹底的に躾けた。 部屋に入る前にして来い!
唯一困ったのは、朝起きたときに手足が動かず、つい金縛りにあったと勘違いすることだった。 猫が数匹からだの上に寝ていれば、起きたばかりの力では手足は何かに押さえつけられたような感覚で、「お前が入るとこっくりさんが動かない」と仲間はずれにされた私が金縛りになるわけはない。
猫は自由でいい。 犬ももっと自由にしてやりたいものだ。
2006年12月25日
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