大黒坂(麻布)
麻生一本松に集う四辻の最後のひとつは大黒坂。 古地図には大黒坂の位置に一本松坂と記載されているものもある。 道筋としては同じ道筋で、暗闇坂と狸坂はこの通りの脇道という位置づけになろうか。 新撰東京名所図会には、辻よりも上を一本松坂、下を大黒坂というと記されている。
坂上から望むとビルの上から東京タワーが顔を出す。 標柱には、「大国坂とも書く。坂の中腹北側に大黒天(港区七福神のひとつ)をまつる大法寺があったために呼んだ坂名である。」と書かれている。ただ大法寺は過去形ではなく今もある。
大黒天の大法寺は日蓮宗の寺院。 創建は享保15年(1597)であるから、徳川が江戸に入る直前。 昔から地元では大法寺の名よりも大黒天の名で親しまれている。大黒坂の坂下をそのまま進むと、麻布十番納涼祭りの行われる道路の真ん中のケヤキ広場。
大黒坂の南側は江戸時代は一角すべてが寺院の寺町だった。ある江戸切絵図を数えただけでこのブロックには22の寺院がある。その中心は善福寺である。 ただそれらの寺院は通りからは少し奥まった配置になっていて、通り沿いは町屋が並んでいた。 江戸時代の寺は庶民が何かと集まる場所だったから、この界隈は相当な賑わいだったのだろう。
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