狸穴坂(麻布台)
風流な響きの坂名である。狸穴坂(まみあなざか)という名前の坂が大都会の中心にあるというのがいい。飯倉の交差点から榎坂を上り、ロシア大使館を過ぎると左にある路地が狸穴坂。 入り口に標柱と石碑がある。
狸穴は麻布に伝わる言い伝えで、夫婦狸が棲む大穴があったという。また、銅を採掘した「まぶ穴」が転化したという説もあるが真偽は不明である。坂道はじゃっかん曲がりながら下っていく。
上の写真の左の石垣上はロシア大使館で、その向こう道路上に樹木が覆いかぶさるところがアメリカンクラブ。並んでいるのが面白い。 アメリカンクラブの向こう側(熊野神社の奥)には明治期には海軍観象台、のちの東京天文台があった。当時は天体観測が都心でできたのである。(移築されて今も残る観測機器(東京天文台))
坂下から見上げると右側の高い崖がかつては狸や貉が棲んだであろう雰囲気を残している。坂下には江戸時代に狸蕎麦というそば屋があった。作兵衛蕎麦とも呼ばれ、昔狸穴の古狸が江戸城の大奥を荒らした折に武士に成敗された。哀れに思った作兵衛が古狸の霊を敷地内に祀り供養したら、そば屋が繁盛したという。
坂下には昭和の雰囲気満載の堺屋酒店が残っている。こんな店が日本中にあった時代に育った自分としては、たまらない郷愁を感じる。
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