近衛坂(下落合)
新宿区と豊島区の区境に近い山手線の学習院下の新井薬師道ガードは2014年に真っ白なコンクリとで全体を塗り固められてとても清潔なガードになったが、個人的には昔の石組の方が好ましいと思う。鉄道の土台はやはり石垣がいい。
そのガードの西側線路沿いの道も一直線の上り坂で土手が全面石垣だった時はなかなかの景色だったのだが、その土手までコンクリート壁になってしまいいささか落胆した。
近衛坂はこの道ではなく、もう1本西側の細い道である。いきなり見上げるような傾斜で迫ってくるが、少し上ると右に左に斜めクランクになっていて、積雪時は坂途中の家に突っ込む人がいても不思議ではない。
坂上に近づくと遠景を望むことができるようになる。山手線の線路が見え、頻繁に電車が行き交う。坂上をそのまま北進するとクランクが続いたのちに道の真ん中にケヤキの巨樹が出現する。旧近衛邸大ケヤキだ。
かつて落合一帯は、華族・近衛家の所有する敷地であり、近衛町と呼ばれていた。地名が変わり、高級住宅街となった今も、近衛家の邸宅玄関先にあった欅の木だけが道路の中央に残されている。明治時代の政治家であった近衛篤麿は、この木を馬車で周ってから出勤するのがルーティンだったらしい。戦後、近衛邸の解体とともに切られる運命であった欅は、住民の嘆願により大切に保存されることになった。
何となくこういう話は聞くと嬉しくなる。歴史を大切にすると、未来が開ける気がするのである。
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