横見坂(横根坂)
樹木谷坂を下り、おりがみ会館の交差点を渡ると、再び上り坂になる。 これが横見坂(横根坂)である。 おりがみ会館は元々「ゆしまの小林」という染め紙屋で、創業は安政5年(1859)の染紙、千代紙の老舗。 伝統技術の和紙染めは文京区の文化遺産に指定されている。
坂は比較的短い坂。 坂の途中に説明板が立てられている。 「(前略)坂下の蔵前通りの新妻恋坂の一帯は、かつて樹木谷といわれ、樹木が茂っていた。 この谷から湯島台に上るこの坂の左手に富士山が眺められた。 町の古老は、西横に富士山がよく見えて、この坂を上るとき、富士を横見するところから、誰いうとなく横見坂と名付けられたといっている。 坂の西側一帯は、旧湯島新花町である。 ここに明治30年頃、島崎藤村が住み、ここがその作品『春』の中に、「湯島の家は俗に大根畠と称えるところに在った。…大根畠は麹の香りのする町で」 とある。ローム層の台地は、麹室には最適で、『文政書上』には、百数十軒の糀屋が数えられている。」
別名を横根坂というが、単純な転化のようだ。 坂上には霊雲寺がある。 立派な門構えの寺で江戸時代から続いている。 寺は徳川五代将軍綱吉が建てたもの。 当時は本堂のほかにも堂塔や学寮の並ぶ大きな寺だったが、関東大震災で焼け、再建したが今度は戦災で再び焼失してしまい、開山堂だけが残った。
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