蛍坂（谷中）

別名三年坂、または中坂。 三年坂は墓地や寺院の脇の坂に多くつけられる名前で、転ぶと三年以内に死ぬという迷信がまことしやかなに言われていた俗言。 この坂は細くて車は通れない。 しかし江戸時代から存在する坂道なのである。

坂下の標柱には次のように書かれている。

「江戸時代、坂下の宗林寺付近は蛍沢と呼ぶ蛍の名所であった。坂名はそれにちなんだのであろう。『御府内備考』では「宗林寺の辺も螢沢といへり」と記し、七面坂南方の谷へ「下る処を中坂といふ。」と記している。中坂とは三崎坂と七面坂中間の坂なのでそう呼んだ。三年坂の別名もある。」

昔はこの坂下は湿地帯で蛍が多く、螢沢とか蛍谷と呼ばれていた場所。コンクリート法面の上は広い墓地になっている。 本立寺と霊梅禅院の墓地だが、江戸時代の切絵図には、本立寺が本宗寺、霊梅禅院が礼拝院と書かれている。

この辺りは別名初音の森とも言われ、江戸時代は鶯谷のうぐいすに対応して、ウグイスの初音を聴ける場所として明治以降初音町とされた。

坂上には寺院が並んでいる。そのうちの一つ、観音寺の築地塀は有名である。 向かいの谷中御廟の塀と対比して絵になる路地になっている。観音寺の築地塀は40m近くあり、登録有形文化財に指定されている。