のぞき坂(豊島区高田)
宿坂の西側の坂道で、まるでスキーのジャンプ台のように感じられる坂である。 都内にはこれ以上の勾配の坂もいくつかあるが、この道幅で一気に下るのは勇気が要るほどである。坂上ぎりぎりまでいかないと坂下が見通せないので「のぞき坂」と呼ばれるようになった。
大正時代以前の坂下は湿地と田んぼが広がっていた。 国土地理院の地図を見ると、この坂が車道として開通したのは明治末期か大正初期のようだ。 坂上にあった岡部邸の真ん中を抜く形で道路が敷かれている。 しかしのぞき坂の圧倒的な迫力に歴史が気にならない。
この坂が22%という圧倒的な傾斜を誇るのに対して、すぐ西側を通る都電の坂道は急坂ではない。 不思議だが、坂の長さはのぞき坂が60mほどで崖を下るのに対して、都電は祖雑司ヶ谷駅から神田川まで500mを切通しにして下っているからである。 のぞき坂の急な部分の勾配は25%に達するが、都電は3%でしかない。
この坂を積雪時に通る人はいるのだろうか。 「東京の坂」という写真集を出している中村雅夫氏が書いているのは、かつて東京で大雪が降った折、のぞき坂では除雪作業をせずに一日通行止めにして、子供のソリのゲレンデとして開放していたという話。 現在は責任問題になるとかいろいろ五月蝿い事情があって不可能だが、昭和はそういう時代だった。
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