兼吉さん坂(杉並区上荻)
面白い名前の坂道である。 「かねきっつぁんざか」と読む。 現在も人気の蕎麦店本村庵から東へ進み環八の四面道に至る道の坂である。 この坂の辺りに小張兼吉という鳶の親方がいて、その家の前の坂だったので兼吉さん坂と呼ばれるようになったという。
坂の始まりは善福寺川に架かる置田橋から。 置田橋は中央線を挟んで、本村橋の北側にある。 坂は緩やかでカーブしながらゆっくりと上っていく。 置田という橋名はこの辺りの旧地名が置田だったことから付いたもの。
この坂の周辺には昭和のはじめまで田んぼが広がり、鍋屋田圃と呼ばれていた。 蕎麦屋の本村庵は小張氏がやっていて、その小張氏の屋号が鍋屋だったので、鍋屋田圃となったという。 現代の社会では理解が難しいが、地方に行くと同じ苗字の家ばかりがある集落があるのが普通で、そういう場所では「鍵屋」とか「玉屋」とかいろんな屋号で呼び合っていた。 東京近郊が農村地帯だったころはまだその習慣が続いていたのである。
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