松ノ木の庚申塔(杉並区松ノ木)
杉並区を南北に走る鎌倉道のひとつ、甲州街道の下高井戸から永福町を経て阿佐ヶ谷に繋がる道の途中にこの庚申堂がある。鎌倉道は諸説あり、研究している人も多いが、古道を江戸時代のもの、戦国時代のもの、鎌倉室町時代のものに分けるのは極めて難しい。ただ点々と残る庚申塔はその痕跡である可能性が高いのである。
松ノ木の庚申塔も江戸時代からこの南北の鎌倉道にあったといわれる。この庚申堂の南には松の木遺跡があり、縄文、弥生、古墳時代の出土品がある。ここには数千年前から人の営みがあったのは確かだ。庚申堂の辺りが標高43m、神田川が35mほどなので、縄文時代は海に近い川の近くの集落だったはず。(弥生町辺りは入江の奥だった可能性が高い)
さて庚申堂の中には3基の庚申塔が並んでいるが、3基とも異なるタイプなのは興味深い。右端にあるのは、立派な唐破風の笠付角柱型の庚申塔で、角柱の側面には蓮葉の浮彫がある。正面は、青面金剛像に三猿、時代は貞享2年(1685)で5代将軍綱吉の頃である。
中央にあるのは珍しい線刻の青面金剛像の角柱型庚申塔。左面に明治29年(1896)10月、井川元次郎と彫られている。さすがに明治時代の石は質の悪い物が多いが、これは線刻が良く残っていると思う。
左端にあるのは比較的オーソドックスな駒型の庚申塔で、青面金剛像と三猿の図柄。日月もくっきりとしており石の質も石工の腕も素晴らしい。時代は享保5年(1720)10月だから暴れん坊将軍吉宗の時代である。杉並区の資料によると、松ノ木内からの移転とあるが前の場所は分からない。なかなか美しい庚申塔である。
場所 杉並区松ノ木1丁目5-10
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