成田山円能寺の庚申塔(大田区山王)
江戸時代は隣接する大森日枝神社(山王社)の別当寺であった円能寺は、元亀2年(1571)の創建。終戦後まで成田山の冠は付かなかったが、昭和27年(1952)に成田山新勝寺の末寺となってから現在の寺名になった。明治初期の地図には、圓能寺、日枝社と並んで載っている。場所はまさに大森貝塚のすぐ傍である。
境内には幼稚園があり、現在は寺よりもそちらの方が賑やかである。正面の本堂にお参りをして、左側にある墓所に入ると、無縁仏の中に地蔵や観音が多数並んでいる。じつはその中で左から二番目の聖観音菩薩像が、大田区の古い資料でも庚申塔として扱われている。
聖観音菩薩の立像で丸い台石に載っているが、この台石と尊像に異なる年紀が入っているので困ってしまった。聖観音像の造立年は貞享2年(1685)4月と彫られている。しかし丸い台石には、「奉庚申供養 観世音一體」と彫られていて、元禄12年(1699)11月の造立年が刻まれている。また「沙門圓能寺定辨良言 新井宿村同行六人」とある。おそらくは聖観音像は年紀通り貞享2年に作られて寺に祀られていたが、庚申講中がそれを庚申講に用いる際に台石を造ったのではないだろうか。興味深い例である。
場所 大田区山王1丁目6-30
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