富士向観音(杉並区上井草)
西武新宿線上井草駅からまっすぐにバス通りを南進する。およそ450mほどで上井草グリーンハイツというマンションの入口にある堂宇に到達する。堂宇の中には聖観音立像と庚申塔がそれぞれ祀られている。聖観音像の方は昔から富士向観音と呼ばれていたので、今でも富士向観音で通っている。
なかなか立派で大きな堂宇で、右側に聖観音像、左側に庚申塔が並ぶ。聖観音像の造立は寛延2年(1749)11月。「武刕多摩郡遅野井村 願主 渡辺賀右門」の銘がある。また「講中 二十一人 同 山口治良兵衛」とあり、この講中は観音であるゆえに観音講と考えていいのか、或は念佛講なのかは分からない。
左の笠付角柱型庚申塔は、享保7年(1722)10月の造立で、日月、青面金剛像、邪鬼、三猿、二鶏が描かれている。「武刕多摩郡遅野井村 同行廿二人 願主 山口武左衛門」の銘がある。二基とも、もとは少し西の道沿いにあったが、大正14年(1925)の区画整理の折、ここに移転してきたもの。遅野井村はこの辺りの江戸時代の地名。元の場所は、50mほど西にかつて流れていた妙正寺川の上流である井草川の橋の辺りではないかと思われる。現在も川は暗渠として緑道になっているが、この川を境に北は石神井村、南が井荻村と言うのが近代の区割で、江戸時代は遅野井村の村境だったものと思われる。
場所 杉並区上井草2丁目17-19
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