猿坂の祠(大田区上池台)
坂道シリーズの猿坂の所でもかなり詳しく書いたのでいささか重複する内容もあるが、ここは石仏ということでご了承いただきたい。猿坂の坂下にのY字路には堂宇があり、その中には小さな馬頭観音が祀られている。猿坂は呑川の支流で洗足池から注ぐ洗足流れと夫婦坂の方から流下する鸛の巣流れの合流点あたりから左岸の尾根に上っていく坂道である。
祠の後ろは広い墓所になっている。この墓所は林昌寺の墓所で、子安八幡神社と並んだ名刹である。ここは江戸時代から林昌寺の墓所だったらしく『新編武蔵風土記稿』にも林昌寺の墓地として出てくる。堂宇の中を覗くと、小さな馬頭観世音菩薩が祀られていた。造立年は天保9年(1838)9月。舟型で石工の銘が「堤方邑 石工甚五郎」と入っているが、かなり風化と摩滅が進んでいて像形の素晴らしさは見えない。
猿坂の道は古くからの街道である。夫婦坂から南下してこの猿坂を下り、環八近くのぬめり坂を経て下丸子に出るこの古い街道は、中世からの平間道であり、鵜の木街道とも呼ばれた。この街道の歴史からすると200年近いこの馬頭観音の歴史もかなり新しい時代のものである。鎌倉街道の痕跡は見つけると嬉しくなる。
場所 大田区上池台5丁目22-1
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