世尊寺の石仏(台東区根岸)
根岸にある真言宗の世尊寺は豊島氏の左近将監輝時が開基となり、応安5年(1372)に創建したという古い寺。この辺りは江戸時代は金杉村という村で、金杉通りという通り名にその名は今も残っている。金杉通りはかつての日光街道である。
山門をくぐると左右に立派な堂宇がある。左の堂宇は子育地蔵と書かれている。おそらくは中央に祀られている全体的にとろけた様子のお地蔵様が中心の子育地蔵だと思われるが、左右にも丸彫の地蔵尊が立っている。
後ろの壁には沢山の小さな舟型地蔵が奉納されていて、小さいながら存在感を出している。台石には「角尾張 見世 二階中」と書かれているが意味は分からない。
その少し先にあるのが笠付の地蔵六面幢である。地蔵の六面幢は珍しいが、旧下谷区には5基が纏まっている。そのうちのひとつがこの六面幢である。造立年は文化11年(1814)11月と台石に書かれている。台石正面には「地蔵尊像壱基 百萬紙供養塔」とあるが百万遍の誤字だろうか。
その先の無縁仏塔の頂上にある舟型光背型の石仏は墓石ではないようだ。「奉造立地蔵尊庚申講衆二世安樂攸」とあるので庚申地蔵である。造立年は元禄6年(1693)2月とある。なかなか美しい彫りの地蔵菩薩像である。
反対側の堂宇にはとても珍しい線刻の六地蔵碑が祀られている。その脇には念仏車があり、これもなかなか良いものである。六地蔵臂は文久3年(1863)7月の造立。台石にはなぜか8月と刻まれていた。願主名は村田市兵衛の名がある。
本堂左の墓所への通路脇に珍しい駒型の庚申塔が立っている。駒型なのに造立年は延宝2年(1674)11月とかなり古い時代のもの。日月、青面金剛像、その脇に二童子、足元には四夜叉があり、その下に一猿と二鶏が陽刻されている。このパターンは他に例がないのではないかと思う。少なくともこれまでに見た庚申塔にはなかった。
場所 台東区根岸3丁目13-22
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