安楽寺の庚申塔(江戸川区北葛西)
北葛西にある安楽寺は浄土宗の寺院。江戸時代の初期に創建されたという。「安楽」という言葉の意味を現代では「安楽に暮らす」「安楽椅子」「安楽死」など何となく怠惰だったり尊さを感じさせない風に捉えている気がする。しかし仏教の世界では、安楽は阿弥陀仏の極楽浄土を意味するのである。安楽寺はそういう意味の名前であることを憶えておきたい。
都道308号船堀街道からの入口には鐘楼付きの山門がある。この山門は山梨県石和の古寺にあったものを移築したらしい。梵鐘は新しい。この辺りは大字西宇喜田というのが明治以前の地名で、1970年代になるまでは田んぼが広がるのどかな土地であった。安楽寺の北西には運河の新川から宇喜田川が分岐して南流しており、東西線の西葛西駅から南は殆ど海であった。
本堂の裏側に立ち入らせていただくと、綺麗に無縁仏が並べられていた。中央の角柱は三界万霊塔で安政6年(1859)7月造立と刻まれている。ここに在るのは大半が墓石だが、一つだけ珍しい庚申塔が含まれていた。
中央右の後ろから二番目にある舟型光背型の阿弥陀如来像がそれである。尊像の右には「奉供養庚申結衆等」とある。左には紀年があり、元禄2年(1689)10月の造立とわかる。宇喜田村(西宇喜田村)の経緯については、法蓮寺のところに書いたとおりである。
場所 江戸川区北葛西1丁目25-16
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