瘡守稲荷宮の石仏(多摩市山王下)
多摩センター駅の北側には森が広がっている。もともとこの辺りは山深い土地だった。多摩センター地域の住宅開発に伴い、1974年に京王相模原線が多摩センターまで延伸、一方小田急多摩線は翌年1975年に延伸してきた。京王線がその先の南大沢や橋本、小田急線が唐木田まで伸びるのはそれから十数年後のことである。
山王下の住宅地の一角に山に登る長い階段がある。この辺りの高低差は20m余り、広い階段を上っていくと小さな神社がある。稲荷神社である。消えかかった説明版を読む。「此の場所に祀られて居る稲荷神社、地蔵尊等は、多摩ニュータウンの事業用地として都に買収され、昭和47年に移転されたもの」とある。稲荷神社は小泉家により元文5年(1740)に創建されたもの。瘡守稲荷というのは、昔は疱瘡(天然痘)がしばしば流行り、治癒の霊験があったことから付いたのだろう。
稲荷神社の手前に近代的な堂宇があり、丸彫の地蔵菩薩立像が4基並んでいる。右端は、享保5年(1720)8月造立の岩船地蔵尊。岩船地蔵は海の近くにあることが多いが山の中である。基壇が船っぽいが違う気もする。右中の地蔵菩薩は天保6年(1835)6月の造立で、願主小泉清八氏の銘がある。左中は慶応2年(1866)11月の造立で、これも願主は小泉氏。そして左端の新しい地蔵は昭和62年(1987)3月に小泉治助氏が建之とある。山王下のこの辺りは小泉氏のテリトリーだったようだ。
場所 多摩市山王下1丁目9-4
| 固定リンク | 0
コメント